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雑感

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2016年2月3日(水)
翼の折れたエンジェル

そのお婆ちゃんとは7年前からのお付き合いである。最初は施設のスタッフと一緒に踊場の診療所に通っていたが段々と歩けなくなり,
数年前からは寝たきりの状態になったので在宅医療になった。
今年になってから食欲がなくなり顔が一回り小さくなり、1日のほとんどを寝て過ごすようになった。数日前から危篤状態だったが夕方に急な知らせが届いた。私に遅れてお婆ちゃんの長女が施設に着いた。長女の年齢は知らないがきっと私より年上である。「老衰と診断して書類を書きました」と長女に伝えた。「老衰..。素晴らしいわ」、うっすら涙を浮かべた顔がちょっとだけほほ笑んだ。今まで面と向かってそんなふうに言われたことのなかった僕は、予想外の言葉に一瞬驚いたが直ぐに暖かい気持ちになった。おばあちゃんは2月末で96歳になる。
病院では「老衰」でなくなることはなく、病院の医者は「老衰死」の診断書を書くことがない。少なくとも病院の勤務医だった頃の僕には書いた経験がない。家路についた車のラジオから「翼の折れたエンジェル」が流れていた。30年前に流行った曲である。30年前、お婆ちゃんは65歳だった。どんな感じの女性(ひと)だったんだろう?
65歳のお婆ちゃんに会ってみたかった。さようなら...。天国で僕の親父に会ったら「僕は元気でやっています」と伝えてください。

2016年1月31日(日)
医師の死角、患者の死角(本の題名です)

国立病院時代、胃カメラの検査後に患者さんの血圧が高くなったので入院してもらうことにした。夫(Wさん)は駐車場の車の中で待っているという。放送で呼び出すこともできず私は当てもなく駐車場を探しまわり、やっとWさんを探し出すことができた。「あの時の先生は白衣を翻して額に汗して一生懸命で..」彼から2〜3年後に聞いた。ある日Wさんが「この本面白いですよ」と本を持ってきた。「医師の死角、患者の死角」で著者はWさんの友人らしい。私が研修医の頃に製薬会社のPR誌「スコープ」という小冊子があり、面白いので気に入り毎号読んでいた。その編集長が著者であることに驚いた。
帯書きも今に通ずるものがある。「信頼できるかかりつけ医を持つ。それがよい医療を受ける近道だ。信頼の芽吹きを予感した医師と出会ったら、歩み寄り、丁寧に人間関係を築こう。芽吹きがなかったら、別の医師を探せばいい。ただし信頼が芽吹かない医師が三人続いたら、それは医師の問題というより、あなた自身の問題かもしれない《本書より》」。
絶版だが今でも中古(古本)はアマゾンで手に入れることができる。医療者にも患者さんにも読んでほしい本である。



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