脳出血後遺症の四肢麻痺で、喉には呼吸のためのお腹には栄養注入のための管が入っている患者さんの在宅治療を10年続けてきた。意識はしっかりしているのでアイコンタクトで患者さんと意思の疎通をとることができた。10年休むことなく2週間に1回訪問してきた患者さんは60歳を超えた。2週間前にお腹の管の交換のため入院していたが、急逝したと午前9時に奥さんから連絡をいただき自宅に伺った。自宅に戻った彼は2週間前と同じだった。声をかけたら目を開くのではないかと思えたが額の冷たさが現実だった。「悲しいのに涙がでないんですよ。不思議ですね」と微笑んで奥様は言います。まだ8時間しか経っていません、実感がなくても当然です。賢くて強く、そして健気に夫を介護し心から夫を愛していた奥さんでした。僕は御夫婦に会えたこと、感謝しています。
|